何年も弾いていないギターを、また弾くまでに確認すること
押し入れやクローゼットから久しぶりに出したギターを、いきなり弾き始める人は少ないと思います。何をどこまで自分でやっていいのか、どこからは持ち込んだほうがいいのか。その線引きが分からないまま、また立てかけて終わる、ということが起きがちです。
ここでは、自分で確認できることと、そうでないことを分けて書きます。順番に見ていけば、今日のうちに音を出すところまで行けるか、それとも一度預けたほうがいいかの判断がつくはずです。
1. ケースから出して、全体を見る
最初は、触る前に見るだけで構いません。
- ボディやネックに、割れや浮きがないか
- 金属パーツに錆や変色がないか
- ケースの内側が湿っていないか、においがしないか
- 付属品(アーム、六角レンチ、保証書)が一緒に入っているか
ここで割れや浮きが見つかった場合は、この先の作業をせずにリペアショップへ持っていってください。弦を張ったまま状態を悪化させても、いいことがありません。
2. 弦は、張り替える前提で見る
長く張りっぱなしだった弦は、変色していたり、表面がざらついていたりします。そのまま弾くこともできますが、どのみち替えることになるので、先に外してしまったほうが後の確認がしやすくなります。
弦を外すと、指板とフレットが見えます。汚れの程度、フレットの減り方、指板の乾き具合を、この段階で見ておきます。
フロイドローズなどのロック式ブリッジが付いている場合は、弦を全部外すとバランスが変わって元に戻すのに手間がかかります。仕組みを覚えていないなら、1本ずつ替えるか、そこはショップに任せてください。
3. ネックの状態は、自分で判断しなくていい
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
ネックがまっすぐかどうかは、弦を張った状態で横から見れば「なんとなく」は分かります。ただ、「なんとなく反っている気がする」から工具を入れる、というのは順番が違います。
弦高の調整、ネックの反りの修正、トラスロッドを回す作業は、ここから先はリペアショップの領域です。調整量の判断も、その1本にとって適切な状態も、現物を見ないと決められません。回す方向を間違えたときの被害が大きい部分でもあります。
自分でやってきた人ならもちろん構いません。ここで言いたいのは、「久しぶりに出してきて、勘が戻っていない状態で初めて触る場所ではない」ということです。
持ち込むときは、いつ頃から弾いていないか、どこに保管していたかを伝えると話が早くなります。
4. 音が出るかどうかを確かめる
弦を張ったら、アンプにつないで音が出るかを見ます。確認するのは次のあたりです。
- ピックアップを切り替えて、それぞれで音が出るか
- ボリュームとトーンを回したときに、ガリガリというノイズが出ないか
- ジャックを軽く動かしたときに、音が途切れないか
ノイズや接触不良は、長く使っていない機材では珍しくありません。ここで異常が見つかっても、それが致命的かどうかは現物を見ないと分かりません。持ち込むときに「この操作をするとこうなる」と再現できるようにしておくと、原因を探す手間が減ります。
5. その1本が何なのかを、調べておく
ここは弾くために必要な作業ではありませんが、あとで効いてきます。
同じモデル名でも、製造国、年式、シリーズによって中身が違うことがあります。「自分のはストラトです」だけでは、仕様の話にならないことが多い。
確認しておくと役に立つのは、この3つです。
- ヘッド裏、ネックプレート、ネックとボディの接合部などにあるシリアルナンバー
- ヘッドやネックの接合部にある製造国の表記
- ヘッドやピックガードに書かれたシリーズ名
見つからないこともあります。無理に分解せず、外から見える範囲で探して、見つかった分だけ写真に撮っておいてください。
これが分かっていると、弦のゲージを選ぶとき、パーツを替えるとき、もう1本買い足すときに、比較の起点ができます。当サイトが仕様をメーカーの公式資料から整理しているのも、この「自分の1本が何なのか」を確かめられる状態にするためです。
6. 戻りにくいのは、機材より習慣のほう
ここまでで、音は出る状態になっているはずです。実際にやってみると分かりますが、難しいのはここから先です。
コードの押さえ方や右手の動きは、思っていたより体が覚えていることがあります。一方で、何を練習するか、どの順番でやるかを組み立て直すところで止まりやすい。昔と同じつもりで難しい曲から入って、うまくいかずにまた置いてしまう、という話はよく聞きます。
戻し方は人それぞれです。昔弾いていた曲を1曲だけ決めて繰り返す人もいれば、教材を使って基礎から順に組み直す人、教室に通う人もいます。共通しているのは、いきなり全部を戻そうとしないことくらいだと思います。
この記事は、久しぶりに触るときに自分で確認できる範囲をまとめたものです。弦高やネックの調整、電装の修理については触れていません。状態の判断と作業は、リペアショップにご相談ください。